2012/2/27 ●銀行での両替とATM

今日はとても面白い体験をした。先日銀行に両替をしに行ったのだが、土曜日でできなかったため今日改めて行ったのだ。Nagpurの駅にほど近いところに昔の城塞があり、今は軍の施設が入っているようだが、それに隣接してState Bank of Indiaの敷地になっていて、立派な建物が立っている。施設自体にAdministrative Complexという名称が付いており、Nagpur Main Branchとなっている。塀際を歩き、警備員が数人立って出入りする者をチェックしている門から敷地に入り、小さな坂を上がって行くと、緑に囲まれた品のある建物が立っている。少額の両替程度で入って行くのは少し気後れするような施設だ。

 

建物入り口から少し奥まったところに、ドルのマークや円のマークが描かれているガラスのパーティションで区切られた部屋があり、そこで外貨両替を受け付けてくれる。初老の男性のデスク前で1万円札とパスポートを出し、書類にあれこれと記入し、サインを求められた。そばにあるソファで5分ほど待つように指示された。

 

実は今回の旅も昨年の旅でも、銀行では両替をせず、デリーやコルカタなどの私設両替所を利用していた。銀行は面倒だ。時間がかかる。昔の経験から銀行での両替を避けていた。しかしナグプールにはそういう私設の両替所がなさそうだったので、仕方なく銀行に頼ることにしたのだ。ソファで待っていても一向に呼ばれる気配がない。待たされることも覚悟していたので何も言わずにジッと待っていた。

 

銀行の中で働いている人たちを観察する。インドでも銀行に勤める人、特にState Bank of Indiaのようなインドを代表する銀行に勤める人はエリート中のエリートに違いない。ここは女性が多いのが特徴だ。サリーを着用した既婚女性がどちらかというと多いが、まだ若い、恐らく未婚と思われる女性もいる。あちこちの机にひたすらチャイを運んでいるだけの女性もいる。彼女はあまり銀行の事務員といった雰囲気ではなく、そういったチャイ専用員のようだった。入り口付近に座っている受付の女性は目が不自由で、顧客の声だけを頼りにその顧客がどこに行くべきか案内している。彼女は銀行の中を自分の目では見渡したことがないのかもしれないが、頭の中にはきっと各セクションの配置図が完璧に入っているに違いない。銀行業務を把握し、顧客の用事に合わせて案内するのだから、ハンディキャップがあってもきちっとした教育を受けてこないと務まらない仕事だ。日本と同様にインドでも大企業にはこういったハンディキャップのある人を一定数雇用する義務があるに違いない。

 

1時間以上たち、あと15分ほどで正午になるというころに、さっきから忙しそうにしているパンジャビ姿の若い女の子が話しかけてきた。申し訳なさそうに「まだしばらく時間がかかる」という。理由を尋ねると、some electronic problemだという。お昼の休憩をはさむこともあり、午後1時半ごろに再度来て欲しいと言われた。この時点でどうやら手続きがこの女の子に渡っていることを知る。インドでは銀行のようなところは皆プライドが高く、「まだか」としつこく催促すると却って機嫌を損ねて手続きを進めてくれなくなるので、あえて何も言わずにじっと待っていたのだ。外国人がソファに何十分も座り続けていると目立って仕方がなく、プレッシャーを感じてくれるだろうと期待したのだ。

 

やむなく外に出た。駅が近いので痛い足を引きずりながら駅へ向かう。ホームで新聞とホットドッグのようなものを買って椅子に座ると、子どもの物乞いが2人まとわりついてきたので仕方なく3等分してあげた。

 

午後1時半に銀行に戻り、ソファに座って10分ほどすると、さきほどのパンジャビ姿の女の子が来て、「やっぱりできない」と言う。コンピューターのソフトに問題があるとかなんとか言っている。どこかに電話して助けを求めたが相手が出ないのだとか。要するにソフトを触ったことがないのだろう。今まで外貨両替を扱ったことがあるのかどうかも怪しい。断って置くがここは外貨両替セクションと名のついた専門部署なのだ。

 

最初に相手をしてくれた初老の男性が1万円を返してくれて、変換の書類にサインを求められる。こういうところだけ銀行の几帳面さを見せつけられる。この件だけに関わっていたのではないだろうが、たった1万円の両替作業に係る手数料なんてたかがしれているだろう、彼らの1時間の時給にも及ばないはずだ。それなのに何時間かけても処理できない。インドの銀行員の生産性の低さに呆れつつ外に出た。

 

帰りにあの初老の男性は住所と個人名が書かれた一片の紙切れをくれた。個人で両替をしている男がいるから訪ねるといい、と親切心からアドバイスしてくれたのだ。天下のState Bank of Indiaが1万円の両替ができずに、個人の両替商を紹介するなんて、とまた呆れる。State Bank of IndiaのAdministrative Complex Nagpur Main Branch の外貨両替課にとって、1万円の現金両替は少しハードルの高い業務だったようだ。

 

堂々とした施設の構えの割にやってることのあまりのお粗末さに、怒りというより呆れながら外に出た。入口のすぐ脇にATMがあるのに気が付く。実はインドで何回かクレジットカードを使ってATMでキャッシングしようとしたのだが、出来なくて諦めていたのだ。キャッシュディスペンサーにVISAのシールが貼っていないから無理なのかな?などと思っていたのだが、両替ができなくなったことで再チャレンジしてみた。ドアの外に立っている警備員にカードを見せて利用できるかどうか尋ねると、「ハーン」と首を横に倒してうなづく。

 

中に入ってカードの挿入にもたついていると、警備員が入って来てこうするんだ、と教えてくれた。どうも今までカードの挿入の仕方が悪くて機械が認識できなかったらしい。カードを挿入口に一度刺して、すぐに抜かないといけないらしい。いつも刺しっぱなしで画面のボタンを押し、途中で「取扱いできません」というエラーが出るのだった。

 

このATMでは一度に10,000Rsまでしか下ろせなかったが、どうせだったらと10,000Rsをキャッシングした。訳の分からない個人の両替商を探し歩かなくて済んだこと、1万円を両替するよりたくさんお金が下ろせたことでホッとし、ATMを出て思わず「ヤッホー!」と手を上げて大声を出した。周りのインド人が怪訝そうな眼で自分を見るが、嬉しい気持ちが抑えられず、また「ヤッホー!」と声を出す。なんだ、最初からこうすれば済む話だったのだ。