インドの公立学校事情

最近、奇しくもデリー、そしてマハラシュトラ州のプネー県で、行政による大規模な公立学校の実態調査が行われた。それぞれ目的が異なるが、インドの公立学校の現状が垣間見える貴重な調査だ。

→教育基本法はできたが、理想ははるか遠くに

15の非営利団体が、デリー市内の60の公立小学校を訪問し調査を行った。インドの中でもデリーは比較的教育行政が進んでいて、他の地域のお手本として紹介されることが多いが、トイレ、図書、職員が不足し、ベンチは壊れたまま、運動場がない、児童の欠席が目立つなど、実態は目指す理想にほど遠いことが明らかになった。

今回の調査は、公立学校の実態をできるだけ市民に知ってもらおうと、デリー行政地区の中央情報委員会(CIC)が決定したもので、なるべく学校内に保管されている、児童の入学や出席状況、運営予算、奨学金制度などの記録も公開するように求めている。

特にデリーの東側地区では、調査チームを拒絶する学校が多く、調査を受け入れた学校も校舎がボロボロで教師や事務員も不足していた。1校当たりの児童数も他の地区に比べて多く、中には2500人の児童に対してトイレが3,4つしかないなど、施設の不備も目立ったという。

また児童の出席率の低さも問題で、今回調査を行った学校の多くで50%程度だったという。さらに教科書(公立学校では無料)の遅配も目立ち、通常インドの新学期は酷暑の後の7月から始まるが、いまだに学校に届いていなかったそうだ。

→プネー県の公立学校、22,000人が不明

マハラシュトラ州政府が運営する公立学校のうち、プネー県にある1850の学校を対象に一斉に調査が行われた。これは先日、Nandedという町の学校で実に3割もの児童が架空で、「水増し」されていることが判明したのを受けての調査で、各学校に登録されている児童の数が実態を反映しているかについての査察だそうだ。プネー県を皮切りに、今後マハラシュトラ州全土の公立学校に査察が入り、なんと6492校、152万4千人の児童を対象に807のチームが派遣されるという。なんとも大規模な査察だ。

プネー県では、届け出されている登録児童27万8401名のうち、7.9%にあたる2万2066名の存否が不明だという。学校側はこれらの不明生徒についてさまざまな理由を並べ立てているが、州の職員によるさらに詳細な調査が行われないと、これらの児童が水増しされた架空の児童なのかどうか、現在のところはっきりとは言えないという。

このように学校が登録児童数を水増しする背景には、児童数に応じて配分される予算や、貧困層への奨学金などがあると聞いたことがある。架空の児童をでっち上げて登録書をねつ造し、州政府当局に提出して、少しでも有利な予算配分を確保し、学校の運営者などにお金が流れているのだそうだ。