2013バンガロールへの旅(8/28~9/4)

●支援している学校を見学させてもらう

MITUのオフィスを最初に訪ねた翌日、Kalaは早速バンガロール郊外にある、支援している学校2か所に連れて行ってくれた。長旅になるということで彼女の自家用車に支援物資(生理用品など)とパソコンを積み込んで、ドライバーを特別に手配し、朝8時過ぎに出発する。車で大体片道3時間はかかるという。いつもはなんとKalaが電車で最寄りの駅まで行き、学校関係者のバイクの後ろにまたがって、両手に荷物を抱えて学校まで向かうのだそうだ。今日はわざわざ日本からゲストを案内するからと言って特別に車を出してくれたのだ。燃料代に加え、高速代も片道200Rs.ほど支払っている。ドライバーにも日当を渡すのだろう、なかなかの出費で、ひょっとしたら配布する生理用品よりもコストがかかっているかもしれないと思うと、申し訳なくなる。

 

出発する時にAndroidタブレットのGPSロガーのアプリを立ち上げた。車はバンガロール市内から西方にどんどん突き進んでいく。こんな田舎を、というような村落を走り抜け、ヤシの木が点在する荒野の一本道を進んだところに、その学校はあった。場所はカルナータカ州トゥムクル県の郊外に位置するSomeshwela Highschoolだ。田舎の学校だが、学校施設は思った以上にしっかりとしていて、運動場もあってバレーボール用のネットなども張られていた。

 
学校の校舎
学校の校舎
男子生徒と。みんなこれでも13歳~15歳だ。
男子生徒と。みんなこれでも13歳~15歳だ。

自分はなんとなく見学に来たつもりだったのだが、到着すると大歓迎され、各教室を周って英語であいさつをする羽目に。こんなことだったら簡単なスピーチを考えておくんだったと後悔しながら、日本のことやバンガロールの印象などを簡単な英語で説明した。自分の名前をいうだけで、聞いたこともない音韻に大爆笑が取れたのはありがたかった。平仮名やカタカナ、漢字まで黒板に披露すると、目をまんまるにして見てくれた。

 

その後給食(mid day meal)の時間になり、子供たちがトレーを持ち、列を作って並ぶ。ぜひ、とのことで自分も子供たちに混じって列に並んでいると、クスクス笑われる。「ゲストなんだから列の先頭に行って先にサーブしてもらってもいいんだよ」と教えられる。この辺りの感覚が日本とは大きく異なっている。実はこの学校でも、大人の教師たちは子供たちの列に並ばず、優先的によそってもらう。しかもカレーの具を多めによそってもらっていたりする。

 

給食室も見せてもらった。実は1カ月ほど前にビハール州の学校給食で農薬混入事件があり、多数の児童の間に死傷者が出るという事件があった。その後同様の事件がインド全土に相次いだのだ。そういうこともあって給食室は比較的きれいに掃除が行き届いていた。しかしそれはあくまで「インドの水準」から見てのことだ。調理にあたっているのは地元の主婦たちだ。写真を撮っていいかを尋ねると、丁重に断られた。それだけセンシティブな問題なのだろう。

 

子供たちは、まずアルミのトレーを取って外の水道で一度洗い、外の土の上に直接置かれた大鍋の前に列を作って並ぶ。そして列の先頭に教師が立っていて、子供たちに青い錠剤を渡す。これは鉄分を含んだ栄養剤だと教えてくれた。水の入ったコップを子供に渡し、その場で飲み干させる。実は子供たちはこの薬が嫌いで、こっそりと吐きだす子も少なくないのだと後で聞いた。その後ライスとサブジーをよそってもらう。他の子供たちと同様によそってもらったのがこれ。なんとも貧弱な、かろうじてジャガイモとトマトのかけらが見つけられるスープとライスのランチだ。

 
これが成長期の子供たちに与えられる給食
これが成長期の子供たちに与えられる給食

インドの子供たちの栄養不良はかねてから指摘されている。特に女子の栄養状態はアフリカのサハラ砂漠以南の地域より悪いのだと国連などが指摘している。実際にこの学校の児童の体格を見ても、モンゴロイドの日本人よりもかなり劣っている。この学校はスタンダード8~10のクラスなので、年齢では14~16歳の子供たちが集まっている。しかし日本でいえば小学3、4年生(10歳)から中学生にかけて、といった体格の子供ばかりだ。

 

このインドの子供の体格の貧弱さに付いて2つ理由があるのではないか、と自分は思っている。一つは貧困による食事量の少なさ、もう一つはインドの一般的な料理自体、元々栄養バランスに留意して作られていないのではないか、ということだ。米や小麦、雑穀などの炭水化物を主食にして、貧しい家庭ではサブジー(野菜カレー)とともに食べるが、具がジャガイモだけ、という場合は少なくない。それが朝夕(昼はなし)同じだったりするのだ。この学校の給食(Mid Day Meal)を見ても分かる通り、予算の都合か、意図的に予算を浮かせているのかは分からないが、とても成長期の子供に食べさせる食事ではない。

 

ちなみにこの学校はGovernment aided(政府による支援校) という運営形態が採用されている学校だ。インドの学校事情は大変複雑で、歴史的に行政による公教育が貧弱だったせいもあり、各地で自主的に設立され、運営が為されていた学校が多かった。近年になって、→Spin off インドの教育事情 その1 インドの公教育 で述べたとおり、政府による公教育が大々的に始まったのだが、歴史的には各地のこうした私立学校の方が幅を利かせており、学校運営のノウハウが集まり、教師の人材が充実しているという現実がある。そこで政府は独自の政府系公立学校(government school)を設立する一方で、各地でこれまで教育を担ってきた私立学校に財政支援を約束し、カリキュラムの平準化など、指導方法に一定の影響力を発揮できるように進めてきたのだ。インド各地の私立学校の多くは今ではこうした政府による財政支援を受け入れるGovernment aided(政府支援校)という運営形態を取っている。給食事業(Mid day Meal)も政府肝いりの事業だ。

                             (続く)