2013バンガロールへの旅(8/28~9/4)

●支援している学校を見学させてもらう(その3)

 

今回バンガロールに滞在したのは1週間ほどだったが、その間にKalaは自分がなるべく多くの学校を見学できるように配慮してくれた。

  

Malleshwaramからほど近い公立学校(Government school)に、Kalaと支援物資を届けに行った。子供たちはすぐに興味深々の様子で自分たちについて回る。皆、裸足だ。サンダルが邪魔なので裸足で駆け回っているのかと思うと、サンダルがないので家から裸足で登校しているのだという。

 

インドでは公立の学校は、貧困層の家庭の児童が通う学校とされている。ここの学校の子供たちの多くは近くのスラムに住むのだと聞かされた。しかし公立学校は一般的に授業の質が低いということで敬遠されることが多く、バンガロール市内でも閉校が相次いでいるのだという。この学校も敷地内に新設の校舎が建築中であるにも関わらず、生徒数は100人ちょっとだという。この辺のちぐはぐさにも、現在のインドの教育行政の混乱が表れている。

 

校舎の中にある唯一のトイレは女子生徒用で、男子は皆外の空き地兼運動場の隅にあるトイレが割り当てられているが、掃除などのメンテナンスがされず、今では打ち捨てられたようになっていて、男の子たちはトイレの周辺の草むらで思い思いに用を足していた。

 

翌日、事務スタッフのGayathriと市内にある支援している学校・施設をまとめて周った。ある学校では、カンナダ語(カルナータカ州の公用語)で授業を進めるクラス(カンナダ・ミディアム)と、タミル語(隣のタミル・ナードゥ州の公用語)で授業を進めるクラス(タミル・ミディアム)に分かれていた。同じ学校の中で話す言語の異なる子供たちがいるのだ。

 

次に向かった施設は、親が刑務所に収容されて孤児となってしまった子供(女子専用)の寄宿舎だった。住宅街の中にある3階建ての施設だが、建物全体が檻のように鉄格子で囲まれており、なんとも無神経で子供たちの心情を傷つける施設だな、と思っていたら、このような保護者のいない女子児童というのは性犯罪などの対象になりやすいらしい。実際に以前、近くの学校に寄宿舎から登校中に襲われたことがあったようで、このように施設全体を外部から侵入できないような処置が為されたという。

 

その次に向かったのは視覚障害者の女子児童が通う学校だった。インドではハンディキャップを背負った子供、特に女子児童も性的虐待などの被害に遭いやすい。そういうこともあってか生徒数は弱視者を含めて30人程度だが、女子だけで一つの学校を形成し、校長以下、教師も1人を除いて全員女性で構成されていた。

 

インドでは大企業の人事にハンディキャップ者が一定の割合で登用されることが法的に義務付けられており、点字などをきちんと勉強し、視覚障害用にパソコンをマスターし、大学へ進学すれば、大企業への就職の道も開けるのだそうだ。

 

次に向かったのはタミル・ミディアム(タミル語で授業を行う)の学校だった。教室が三つしかなく、手狭になってきたので近くのビルに最近部屋を借りて教室にしているということだった。その中でなんとプレスクール(いわゆる幼稚園)からクラス10までの子供が勉強しているという。教室の数が足りないので、いくつかの学年が一つの教室を共有しているのだろう。

 

黒板に何やら表と数字が書かれてあるので眺めていると、各学年ごとの男女の児童数と社会階層についてだった。全部で200人足らずの児童のうち、男女はほぼ同数に近く、衝撃的なことに9割以上がSC(=Schedulled Caste, いわゆる昔で言うところの不可触民)だった。社会階層についてはSCとOthersという分類になっている。

 

カルナータカ州において、隣の州のタミル・ナードゥから何らかの事情で移り住んだタミル人たちの中で、特に社会的階層の低い家庭の子供はこうして1か所に集められて教育を受けている。ここはそういう学校だったのだ。

 

それぞれが属するコミュニティごとに、子供を通わせる学校が自然と決まり、例えばムスリムの子供はマドラサと呼ばれるイスラームの神学校に通う子供が多い。富裕層は進学実績の高いイングリッシュ・ミディアムの私立学校に高い授業料を払って子供を通わせる。それは各コミュニティごとに断絶が激しいインドの社会を反映しているのだ。百歩譲ってそれをある程度は仕方ないものとしても、問題なのは学校間に設備や教師の質に差があり過ぎて、どの学校に子供を通わせるかで、子供の将来が大雑把に決まってしまうことだ。それがプレスクール(幼稚園)や小学校の時点で大方決まってしまうのだ。

 

MITUはバンガロール周辺の学校の中で、社会的に不遇の立場に置かれている子供が集まるような学校を中心に支援活動を行っている。そうした学校を中心に周ったからというのもあるのだが、インドの学校事情の複雑さについて痛感せざるを得なかった。

 

帰りのリクシャの中で、Gayathriがそっと打ち明けてくれた。「こうして学校を周って生理用品を届けているのですが、それには生徒たちの分だけでなく、女性教諭など大人たちの分も含まれています。生徒たちの分を大人が横取りしてしまわないように、ということです。」