●生理用ナプキンの製造工場


MITUでは昨年5月に、在豪のインド人団体など複数の団体の資金協力を得て、ベンガルールーから北西のトゥムクル県内のハッティハリという村内で、生理用ナプキンを製造する小さな小さな工場を作り、稼動させた。


MITUでは、これまで衛生意識の啓発と初経教育の一環として、随時市販の生理用品を学校の女子生徒に無償配布してきたが、どちらかというと啓発活動に重きを置いて活動している。


そうした経緯からこうした製造事業については一貫して消極的だったのだが、一昨年秋ごろから、縁あってといおうか、いくつかの団体からの申し出がタイミングよく重なったことから、このプロジェクトのコーディネートを担うことになったのだ。


昨年2月にMITUを訪れたとき、マイソールにある同業種の工場や、今度工場を設置する予定の村と倉庫(というより納屋に近い)を視察のために訪れた。当初、本当にここでできるの?というほど頼りない建物だったが、できるだけリフォームし、どうにか衛生用品を製造できる程度の環境になっていた。恐らく先進国の産業人から見れば、あっけないほど簡素なつくりの機器に違いないのだが、製造機器も一通り揃えて、オペレーションができるようになっている。Google mapに道が載っているかどうかも怪しい寒村でよくぞここまで、というほどの出来だった。最大の懸案だった、衛生的な製造を確保するための埃の流入を防ぐための取り組みも随所に見られた。



まず、建物前にあった土のマウンドがきれいに除去されていた。これにはわざわざ重機を投入したらしい。入り口前にはコンクリートで広く土間がとられ、毎日箒で掃くことで土や砂の工房への流入を防げるようにしている。


入り口には雨天時に雨水が入り込むのを避けるための、大きな庇(

ひさし)が取り付けられ、ドアの敷居が意図的に高く作られている。これは風で外からの埃が入るのを防ぐためだ。


入り口を入ってすぐにデスクを置いた事務室となっている。これはいわば外につながる入り口と、奥の製造スペースとの間の「緩衝スペース」となっており、入り口からの埃の流入をここでいったん受け止める構造になっている。



生理用ナプキンの製造は、簡単に言えば原材料の綿素材を攪拌機にかけて均一に分解し、適量を成型機にかけて圧力で長方形に成型する。そしてパッキング、という工程を経る。工房はカルナータカ州トゥムクール県郊外のハッティハリという村にあり、1日に一定程度停電があるため、電気が使える時に機器を稼動させ、停電時はパッキングなどの手作業を行う。


 

1パック4枚入り、1日に200パック程度のかわいらしい製造量だ。村の3人の女性が作業に当たっている。事業としては採算ベースには到底届かず、当面は製造作業の訓練所(トレーニングセンター)として運営されており、運営費用は寄付によって賄われている。この辺りについては、営利の事業として軌道に乗せることよりも、品質的に安定した製造業務の確立と、社会的・経済的弱者層の女子たちに安価で生理用品を供給し、月経時の衛生的な生活を普及させることを当面の目的としていることも大きい。しかし経済的な負担は避けられず、毎月20,000Rs程度の赤字を計上していて、MITUの財政運営を圧迫させる要因となっている。


ここで製造された生理用ナプキンは、MITUが支援している団体、学校などに頒布されているが、頒布先の状況によって無料だったり、1パック5~10Rs程度の料金をもらったりしている。これは少し微妙な問題を含んでおり、無料もしくはあまり格安で頒布していると、中には自分で使用せずに転売して利ざやを稼ぐ人たちがいるらしい。



インドでも生理用品は販売されている。P&Gやユニリーバ、 Johnson & Johnsonといった多国籍ブランドはもちろん。国産メーカーも市場に商品を投入している。しかし、低所得層では、充実した教育を受ける機会もなく生理に対する正しい知識が欠如しており、加えて現金を一家の長が握る傾向が強いため、女性が自分の裁量で使えるお金など元々少ないのだ。インドでは伝統的には日々の細々とした食材や日用品の買い物ですら男性が受け持つ。


そうした生活の中で、女性が生理時の経血の手当てのために、自らのお金の中で生理用品を購入したり、財布を握る夫や父親に購入を訴えることはとても難しいことだ。それどころか、むしろMITUから格安で手に入れた製品をお金のために転売する人が現れても決して不思議なことではない。


一方、MITUの活動の主目的はあくまで社会的に困難な位置にとどまっている女子たちの意識の向上にあり、生理用ナプキンの普及活動ではない。あくまで今のところ選択肢の一つを提供しているに過ぎない。インドの女性たちが正しい知識を身に付け、自分たちの考えと意思で取るべき行動を選択できるようになることが本来望ましいのだ。その意味において、MITUが製造、提供している生理用ナプキンを、望んだ社会的弱者層に本当に利用してもらえているのかどうかについて、厳格に追跡するのは実際問題難しいし、それほど重要ではないのかもしれない。しかしそうしたジレンマを抱えながら当面は活動を進めていくしかないのだろう。