●開発が続くクシナガラ

 

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クシナガラに到着した時に見た国道の拡幅工事は、自分には少し不思議な光景に映った。そしてクシナガラに滞在してその小さな田舎町ぶりを実感するに従い、ますます両側6車線ほどにまで広げようとしている国道工事の目的に興味が湧いてきた。単にクシナガラ周辺の道路を整備しましょうというレベルにはとどまらない、もっと大きな地域開発計画のようなものか、あるいはインド各地を結ぶインフラ整備計画などを想像させるような、それほど大がかりというか仰々しいというか大袈裟なものを感じたからだ。

帰国して少し調べてみると、ちょうどこの4月からブッダ・ガヤー、クシナガラ、デオデー村(?)、ルンビニ(シッダルタナガール)、シュラヴァスティを周ってラクノウに至る仏蹟サークルの道路整備が、なんとJICAの支援で始まるらしい。それは知らなかった。95億円の円借款が原資のようだ。素人なので95億円というお金でこれだけの距離にまたがる道路を整備すると、どんな道路が出来上がるのか想像がつかない。

→ブッダ・ガヤに続く道、40億ルピー投資

ブッダ・ガヤ・クシナガラ間が観光バスでストレスなくすいすいと行き来できるようになると、観光客にとっての利便性は高まるだろうし、恐らくクシナガラへの観光客数ももっと増えるのではないだろうか。サールナート、バイシャーリー、ラージギールへのアクセスもよくなればなお良いのだが。



より大きな地図で 仏蹟サークル道路整備 を表示


この道路整備をてこに、U.P州政府はどんな観光開発プランを描いているのだろう。カシア近郊の国際空港計画も宙に浮いた状態のようだが、一方で周辺の道路整備は進められている。インフラを整備しただけでは観光収入の増加には結びつかないだろう。ホテルやレストラン、ショッピング施設、仏蹟周りの観光地開発など、観光客の数を増し、1日でも長く滞在を延ばして、お金を少しでもたくさん使ってもらうのが観光政策の目的だろうから、課題は山ほどあるだろう。クシナガラに滞在してみると、何よりも観光産業に必要なのは人だとつくづく思う。仏さまの涅槃の地という、世界に二つとない場所を擁し、大涅槃寺が整備され、世界の仏教財団がお寺を建てる中で、土地の人たちはそこに下働きとして雇用されることはあっても、観光収入に結び付くような事業に活かしきれていない。せいぜい子どもたちが観光バスの乗降口の前で歌を歌って喜捨を求めるくらいだ。チャイとサモサを出す小さな店でも、英語表記のメニューを1枚用意するだけで外国からの観光客の歩留まり率は向上するに違いないのに、と思う。

クシナガラにはもう一つ、まだ海の物とも山の物ともしれない開発話があるようだ。それはネパールに拠点を構える仏教財団が大きな仏さまの銅像を建立するという計画だ。実現すれば世界最大の152メートルの高さに達するという。当初はブッダガヤ近辺に建立する予定だったのが、2002年ごろにプランがクシナガラに移ったらしい。クシナガラがいいのではないかと賛意を示したのは、あのチベット亡命政府のダライ・ラマ猊下だとかで、それから一気にクシナガラへとプランが変更されたのだとか。しかし新聞によると、この計画には仏教徒であるマヤワティ首相率いるU.P州も関わっており、750エーカー(約3平方キロメートル)の土地を農民から買い上げて財団に無償貸与するという話が進んでいたそうだ。何しろマイトリヤ・プロジェクトという財団のサイトを見ると周辺の整備を含めて5億ドルの経費を見込んでいるというから、州政府としては三顧の礼を尽くしてでもクシナガラに是非、という感じなのだろう。計画では高さ152mの大仏像に加えて、ホールや博物館、アートギャラリー、大学や病院などの併設まで予定されているらしい。しかし政府から提示された代替の土地に不満を持つ農民の間から反対運動が起きており、2008年ごろから計画がとん挫しているそうだ。クシナガラに滞在中、このプロジェクトに関わる話は一度も聞かなかった(※)。

→マヤワティの夢、大仏像計画は遅れそう

マヤワティ州政府首相はダリット(不可触民)として、また女性として初の州政府首相にして仏教徒であり、まさにインド憲法を起草した初代法務大臣のアンベードカル博士に重なる部分があるが、仏蹟であるクシナガラに特別思い入れがあったり、便宜を図ったり、利益をもたらしたりということはあるのだろうか?クシナガラに到着してすぐに目に着く大きなゲートの柱の部分には、これみよがしにマヤワティ女史の大きなサインが刻まれているが、それ以外にはこれといって目に付くものはなかった。