2/13 ●欲望の町

ラクノウには結局朝9:00に到着した。12時間かかった計算だ。その後ゴラクプルに向かう列車を見つけ12:00に発車。ゴラクプルに着いたのは17:30.昨日の朝ウッタルカーシーを出て丸々1日半かけての移動だった。駅前の「これぞインド」と呼べる汚い安宿に宿泊。めちゃくちゃうるさいが仕方ない。一晩中車のクラクションに悩まされた。

ゴラクプルは、なんといえばいいか欲望の街という印象だった。とくにウッタルカーシーのような、アシュラムとそこに滞在するサドゥの多いストイックな町から来ると、駅前にチキンやマトン、魚のフライを並べる店がズラーっと並んでいるのを見て心が躍る。ビールを売る店があり、次々と客が買いに来ていて、その場で詮を抜いて飲んでいる。ウイスキーに比べたらビールは高価なせいか、勤め帰りのサラリーマンといった風情のしっかりとした身なりの人が多い。そんな人が鉄格子が全面に張られたお店からビール瓶を受け取ると、詮抜きがなかなか回ってこないのがじれったい様子で、歯を使って詮をガジガジこじ開けて、一気に3分の一ほど飲み干している。そしておもむろにズボンのポケットからなにか引っ張り出してかじりながら、またぐぼーっと飲み干し、ビンを掲げて残りの量を確かめる。まるでアル中の所業だ。

その裏には闇の居酒屋?風の店まであった。奥まった粗末な建物の小さな小窓からお金と引き換えにウィスキーの小瓶が手渡される。周りはこれまた粗末なトタンに囲まれて、木の長いすが何客か置かれている。ウィスキーを買った人はグラスに少し注ぎ、その後になにやらビニールパックの液体を少注ぐ。どうやらミネラルウォーターのようだ。いくつかアルミの大きな鍋が並べられて酒の肴のようなものが入っている。それを小皿に盛ってつまみにしながら、その場に居合わせたもの同士なにやら話しもって酒を飲むのだ。日本で言えば立ち呑み屋のような雰囲気だが、外に漏れないほど小さな灯りがあるだけで、とても暗い。入り口付近に見張り?らしき男が椅子を置いて座っている。自分は酒はあまり飲まないが、インド人の飲酒に興味があったので気になって何度も見に行ったが結局中に入れなかった。

いったいインド人の飲酒はどのくらい広まっているのだろう。昔から田舎では密造酒が広まっていて、たまに中毒で十人くらいがまとまって死亡、なんていう新聞記事を何度か見たことがあった。最近は規制が緩やかになってきたのか、ここ10年ほどで一気に飲酒年齢の低下が進んだとも言われている。都会のリカーショップでは、まさに入れ食い状態で、店が夕方に開くやいなや、ひっきりなしに客が買い求めに来るのを何度も見た。自分が見た限りにおいては、インド人は決して禁欲的な人ばかりではない。むしろ欲望に対してとても素直だと思う。肉や魚などについても言えるが、店の前はどこも客でごったがえしていた。

ゴラクプルに来てもう一つ印象的だったのは、女子学生の自転車通学の姿だった。14年前の古い記憶をたぐり寄せても、当時女子の学生が自転車に乗っていたのを見かけた記憶が全くない。それだけ女子の就学と進学をめぐる状況がこの十数年で大きく向上し、一般的になりつつあることを証明しているのもしれない。歩いて通える小学校から少し距離の離れた上位の学校に進学し、通学用に親から自転車を与えられたのだろう。デリーではサリーを着た女性がスクーターを乗り回したり自動車を運転している姿は珍しくないのだが、自転車に乗っている姿はたまたまなのか目にすることがなかった。

 

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