充電中の携帯電話が爆発


 

マハラシュトラ州・ナグプール郊外の村で起きた事故。コンセントにつないで充電中の父親の携帯電話で12歳の少年がゲームをしていたところ、携帯電話が突然爆発したという。少年は顔にやけどを負い、特に右目は完全に損壊、すぐ近くの病院からさらに2つの病院に回されてナグプールの州政府病院にて手術を受けたが、右目を失ったという。

→携帯電話の爆発で少年が失明---ナグプール

一体どうしてこういう事故が起きたのだろうか。

まず考えられるのは、携帯電話自体の消耗の度合いだ。インドでは携帯電話が広く普及し、地方の農村でも、貧困世帯でも持っているのが珍しくなくなった。しかし日本のように新製品を追いかけて1世代前のものがすぐに処分されるのではなく、次々と中古携帯が人の手に渡って行く。多くの人は友達や家族、知り合いの中古携帯を譲り受けて使用しているので、中には異常に使い古したものが現役で使用されているのだ。本当に擦り切れるまで使われている。町中には携帯電話の修理屋があり、カバーを開けて中の基盤を半田ごてを使って器用に修理している風景が見られる。

もう一つ、記事の中で触れられているが、中国メーカーの携帯電話が多い点。中国メーカーの製品と言ってもピンキリだろうが、実際にインド企業のものと較べて安いラインナップが携帯電話ショップには揃っていて、およそ聞いたことのないメーカーの物も多い。この爆発事故を起こした携帯電話も中国製だったという。

そしてもう一つ重要な問題と思われるのが、電圧の不安定さだ。インドは公には電圧220~240Vとしているが、実際にはとても不安定だ。電力自体不足していることは確かだが、変電設備にも色々と問題があるのだろうか。実はこの3月にインドを旅行した際に、訪問した各地のホテルで電圧を測定した(→Spin Off  測定:インドの電圧)。都市によって、また時間帯によって電圧が大きく変化することがある。低い時は150v、高い時は何と260vもあるのだ。下に掲げたグラフはその時の測定結果の分布を表しているが、82回の測定のうち、実に半数以上の46回は公的に発表されている240vを超える数値を示した。

 

自分がインドで購入したsamsungの携帯電話の充電器には150v~300vまで対応可能という表示があった。恐らくインドの電力事情に対応した仕様なのだろう。しかしこういった過酷な電力供給の状態の中で、品質や耐久性に不安のあるサードメーカーの製品や、使い古した携帯電話を充電しながら、なおかつ負荷のかかりやすいゲームに興じることに、無理があるのかもしれない。そして恐らく多くのインド人はそうした認識には乏しいに違いない。

国として全体的に電力が不足しているインドで、携帯電話が爆発的に普及した背景には、単純なことに、携帯電話が最先端技術の粋を集めて作られており、少ない電力で充電でき、長時間の使用に耐えるバッテリーを内蔵しているから、という一面が非常に大きいと思う。それに比べて洗濯機や冷蔵庫をみんなが使いだしたら、田舎の村では今以上に頻繁に停電が起こるに違いない。しかし記事の中でも触れられているように、小さな電力で動く携帯電話でさえ、末端ではこうした事故が時々起きているのだろう。