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6月

2011

100人の男に強姦された少女  

レイプを社会問題としてとらえるのは難しく、気が重い。それがどんな国でも実態が正確に分からないからだ。その事象の性格から、被害を受けたものが警察に訴えないことが多いと聞く。まず、被害を受けた後にそれを犯罪として受け止め、警察に訴えるべきと判断できるかどうか被害者によって異なり、「警察への訴えやすさ」が国や社会によって異なり、警察に訴えた後の「被害者への風当たりの強さ」も国や社会によって異なる。

→端役の男たち100人に暴行を受けていた少女

インド、ケララ州で最近発覚した事件はとてもショッキングだ。わずか14歳の子供が初めに父親に強姦されたのを皮切りに、その後2年間にわたって父親の仕事関係(映画の業界)の男たちに日常的に慰み者にされていたという。少女が親戚に相談したことが事件の発覚につながったそうだが、29人がすでに逮捕され、他の逃亡している71人を追って他州にまで警官が派遣中だという。どうやって100人もの男を容疑者として特定したのか不思議に思えるほどの大人数だ。少女は性病を患って入院中という。取り返しのつかない病気までうつされていないことを願うばかりだが、加害者が100人にまで広がる間に誰もそれを止めようと、または通報しようとしなかったところに、インド社会の暗い側面を感じずにいられない。ひょっとしたら自分たちが見ている表面は三日月のようにほんの一部分にすぎず、大半は影に覆われているのではないかと想像してしまうのだ。

一応統計をあたってみる。インド犯罪記録局というところが出している「CRIME IN INDIA 2009」によると、2009年度の年間の強姦の認知件数は21397件となっている。日本での2009年度の認知件数は1402件(平成22年版犯罪白書)となっているので、15.3倍ということになる。ちなみに人口は約10倍なので、発生率はそれほど日本と較べて極端に高くないということになる。一部のインド人の中には、アメリカほどレイプの発生率は高くないと胸を張るものさえいるそうだ。ちなみにさきほどのFIGURES AT A GLANCEでは、強姦とは別に女性に対する犯罪として、強制わいせつ(molestation)、親族などによる暴虐行為、女児・女性の誘拐、女児の人身売買などの認知件数も紹介されている。強制わいせつ(molestation)はインドで38711件、日本では6688件となっており、インドは日本の5.79倍、人口差を勘案すればむしろ発生比率はインドの方が低いということになりそうだ。ちなみにダウリに関わる死亡事件が8383件起きている。しかし性犯罪事件に関して考えると、先述したようにこうした統計上の数字が恐らく実態からかなりかけ離れている空しさを感じずにいられない。

インドで実際に強姦被害に遭ったような人に遭遇したことはないのだが、インドのニュースサイトにはほぼ毎日強姦のニュースがインドのどこかしらで起きていることが報じられている。日本だったら連日ワイドショーをにぎわせるような陰惨なものも多い。10歳以下の女児、幼女が被害に遭うケースも特別珍しいことではない。一体どうして犯行が可能なのか分からないが、2歳女児とか、生後6か月の赤ん坊などの被害も報道される。時には60歳を超えた女性でさえ被害に遭うらしい。激しく抵抗されたために首をちょん切られたり、両目を潰されたり、走っている列車から突き落されて命を失ったりと、生命の危険に晒されることも多い。

また、インド人と言えば身分に対する感覚が強く、ダリット(不可触民)の少女をカースト・ヒンドゥーの男たちが数人がかりで襲ってしまうようなことは昔から珍しくなかったが、最近では旅行などで滞在している欧米人の女性などが襲われることも多い。もともとインド人の、外国人(特に欧米人)に対する「目上意識」は相当なものがあり、そういった邪な歯牙の対象として捉えるのをためらう傾向が強かったと思うが、少しずつ垣根が低くなってきているのかもしれない。

インドのニュースで性的犯罪の被害者に子供や外国人が目立つのは、ひょっとしたらインドの成人女性などは被害に遭ってもひた隠しにする傾向があるからかもしれない。事後に殺されて遺体が発見されれば事件化するが、そうでなければたとえ被害を訴えたとしても家族や周囲のコミュニティの目が極端に厳しくなる。決してただの「被害者」として守ってくれるわけではなく、「汚されたもの」として忌避され、「村八分」に遭う可能性すらある。カーストのコミュニティから外された女性の末路は哀れで悲惨を極める。都市に出て物乞いか売春婦になり果てるしかない。それでも生き続けることができれば幸運といえるのかもしれない。

 

インドの警察も日本の警察のように決して誰の話でも聞いてくれるわけではない。特に田舎の農村や山間の女性は、夫や父親などの庇護者を通じないと警察に訴えることすらできないというのが通例だ。

 

また、嫁不足が深刻なハリヤナ州では、近親相姦が半ば慣習化しているという話さえある(→近親相姦 ハリヤナ州の恥ずべき社会遺産)。小さなコミュニティの中で、女児が父親に強姦されたり、他所から嫁いできた嫁のように立場の弱い女性が、義理の兄や義父に関係を迫られても耐え続けるしか術がないような状況は、恐らく事件化に至らず強姦の認知件数に数えられることもない。そしてそれはハリヤナ州だけの特別な例にとどまらないだろう。ケララ州で発覚した事件も2年の長きにわたって少女は耐え続け、男たちに黙殺されてきて、今回偶然にも表に出てしまったのと同じように、恐らく他州でも似たような例はごろごろあるに違いないと予感させる。

やはりニュースや統計の数字として表に現れるのは一部に過ぎない。茫漠とした闇の中に多くの澱のようなものがたまっていて、それらは強姦とも強制わいせつとも名づけられることなく、それぞれの女たちの記憶の中に静かな重しのようにとどまったままなのだ。

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コメント: 3

  • #1

    正義 (月曜日, 24 12月 2012 12:58)

    何とかならないのでしょうか。
    教育ですね。

  • #2

    R U (火曜日, 01 1月 2013 19:47)

    インドの伝統のカースト制度が根強い限り 教育をしても効果は少ないと思う。

  • #3

    M N (水曜日, 16 1月 2013 02:26)

    国の習慣や制度、歴史は違えど、心は同じです。女性の気持ちが理解されていません。私は、力や暴力でそれも、数人で女性を犯すのは、男として最も醜い姿であり、人として認めることができません。インドがこのような国で、女性の立場がこんなにもないがしろにされている国だとは知りませんでした。国をそして家族をつくらなければならない男性、国の指導者も含めてしっかりして欲しいです。日本でもすくなからず起こっていることでしょうが、弱い者を手玉にとる男性には、本当に怒りを感じます。家庭での教育も大切だと思います。インドの女性に強く立ち上がってもらいたいです。もっと彼女たちに情報が必要だと思います。

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