2011年

10月

16日

インド人学生がアメリカに渡るワケ

アメリカの大学に進学するインド人学生は昔から多かったものの、ここ最近、加速度的に急増しているという。参照できる統計として最新の2009-2010の学業期で10万5千人がアメリカで学んでおり、学生ビザの取得も前年比2割増の勢いだそうだ。今やアメリカ国内で外国人としては2番目に多い存在なのだ。ちなみにトップは中国人学生だそうだ。

 

→急増するアメリカのインド人学生、外国人としては2番目に多い存在に

 

大きな要因として、本国インドでの加熱する教育熱に対して、受け入れる大学側のキャパシティが限界を超えていることが挙げられるという。すでにインド各地に15も設立されているIIT(インド工科大学)をはじめとして、IIM(インド経営大学)、IISc(インド科学大学)、名門デリー大学、ネルー大学など、国際的に名の知れた大学をいくつも擁するインドだが、あまりの受験生の多さに、合格枠からあぶれる学生が続出しているという。

上の記事の中では、アメリカのアイビー・リーグ(アメリカ合衆国東部の、世界でも屈指の名門大学8校で構成される連盟)に属する大学に留学したあるインドの女子学生について紹介されている。彼女は、その優秀な成績が評価されて複数の大学から奨学金のオファーを受けたという。「1,5万~2万ドルの奨学金とともにぜひ、わが大学に」と名門大学から誘いを受けたというわけだ。しかし彼女は元々、デリー大学の入学試験で93.5%の正答率を挙げたものの合格基準に達しなかったためにアメリカの大学に入ったという。そのデリー大学は今夏、あまりに受験生の試験結果が高すぎて、もはや一部の専攻についてはほぼ満点を取った学生だけしか入学枠を用意できないと発表し、問題を投げかけた。インド工科大学なども、アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)に入るよりも難しいと言われて久しい。IIT-JEE(インド工科大学入学のための共通試験)を突破できなかった優秀なインド人学生が、MITにはゴロゴロいると言われている。

一方でアメリカ側の事情もあるそうだ。景気後退のあおりで大学入学希望者が減少し、優秀な学生も減っていることから、アイビー・リーグはわざわざインドまで代表団を派遣して優秀な学生をスカウトしたり、そういった有望な学生を抱える学校とパートナーシップを結ぶ動きを活発化させているのだという。インドに学生を集めるための事務所を構えている大学もある。今週にはアメリカ国務省が主催のアメリカ-インド高等教育サミットがジョージタウン大学で開かれ、両国の提携関係がより強化される予定だ。

インド側の事情に戻って考えると、こういったこれまで垣根の高かったアメリカの大学が身近になると、インド人の学生にとっても選択肢として一般的になってくる。インド国内の大学はもはや「無駄に」競争が厳しく、受験を控える学生に肉体的・精神的に過度の負担を与えている。インドでも成績不振を理由に自殺に追いやられる学生の数は少なくない。そうでなくとも健康面や精神面で体調を崩してしまうことが社会問題となっている。そこまでして運よく希望の大学に入学できたとしても、それだけの苦労と犠牲に報いるだけの学習環境をインドの大学が提供してくれるかというと、疑問視する向きもある。

研究室を含む施設の充実ぶりや多彩で質の高い教授陣、幅広い一般教養科目、卒業後の進路選択の幅広さなど、アメリカの大学で学ぶ方がむしろいろんな面でメリットが大きいのではないかと評価され始めているのだ。逆にインドの大学は学生をキャンパス内に囲い込み、カリキュラムはともすれば硬直的で、自由がないとされる。卒業後の輝かしい進路が約束されている学部も意外と少ないという。

先日、インドのバンガロールに本拠地を置く世界有数のITコンサルタント会社、インフォシスの名誉会長がニューヨークで開かれた全IIT(インド工科大学)サミットで、「IITの学生のレベルが下がってきている」などとぶち上げて大きな話題を振りまいた。

→ナラヤナ・ムルティ名誉会長(Infosys)「IITの学生の質は低下している」

彼は、「IITの入学競争率が厳しくなったおかげで、コーチングセンター(インドの学習塾)が入試テクニックばっかり教えるようになった。確かにIITの上位20%の学生は世界のどこに行っても間違いなく通用するほど優秀だが、残りの80%はアメリカの大学院に進学しても、企業に就職しても、残念な結果に終わっている」と問題提起し、「IITはマサチューセッツ工科大学やハーバード大学には遠く及ばない。これらと並ぶために、IITは学生の選抜方法についても改革が必要だ」と訴えた。

インドが高等教育施設の量的・質的不備のせいで、多くの優秀な学生を国外に逃しているのは一つの現実のようだ。しかし、田舎の公立小学校で進級できずに途中でドロップアウトしてしまう児童がいる一方で、MITやハーバードを席捲するような学生があふれるように創出されている事態に、ただ圧倒されるばかりだ。気が遠くなるほど振り幅の大きいインドの教育事情の一端を垣間見ている思いがする。

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コメント: 1
  • #1

    (水曜日, 19 2月 2014 12:03)

    インドは田舎の子しかドロップアウトしないのですか、、、

    イギリスは、どこに住んでいようが、出来ない子は途中でドロップアウトします。
    街の中で固まってます。。。。