2012年

2月

17日

恋愛結婚の代償:進歩か後退か

 

→父親、娘の結婚に懺悔の剃髪

オディーシャ州の、クチンダ郡という地方で起きた出来事。電力開発会社に勤める27歳の女性が同じ会社に勤める上司と恋に落ち、6年間の交際を経てこの1月に結婚式を挙げた。しかし二人は異なるカーストの出身(ともにOther Backward Casteに指定されている)だった。新郎の属するkulitasというカースト集団は結婚に反対しなかったが、新婦の属するaghiriaカーストにとっては許されない結婚だった。

寺で開かれた結婚式には、新婦側からは両親のみが参加したという。しかし結婚後は新婦側の家族と所属するカースト・コミュニティの関係がギクシャクし始めたことから、2月に入って新婦の父親がカースト・コミュニティと話し合いを重ねた上で「懺悔の儀式」を行った。コミュニティの成員を招いて、ブラーミンの司祭の下で規定の儀式を行い、剃髪をしてカーストからの追放を免れるよう許しを請うたという。その後饗宴を開き、ライス、ダル、野菜、マトン60kgが振舞われた。

新婦の父親は高等学校の校長を勤めて退職、その子供たちも教育を受けて二人は公務員だという。今回結婚式を挙げた新婦もIT関係の学位を取得して現在の会社に就職、新郎はMBAを取得したエリートで、会社でもマネージャークラスだという。

恐らく、両方のカーストには序列関係が暗黙のうちにあり、新婦側のaghiriaの方が上だったのだろう。通常、下位のカーストが上位のカーストと婚姻関係を結ぶ場合は、カーストの上昇に寄与するということで不問にされることが多く、逆に上位のカーストの方は激しい抵抗を示すことが多いからだ。

興味深いのは、新婦の両親ともに結婚式には参加して二人の関係を認め、一方でカーストとの和解・調和にも気を配っていることだ。恐らく他の親族を結婚式に参加させなかったのも、カースト・コミュニティとの過度な摩擦を避けるためだったと思われる。インドの他の地域、コミュニティであれば名誉殺人にまで発展することもあるケースだが、娘の意思と連れてきた男性の能力やキャリアといった実利を父親は考慮したのかもしれない。また、高校の校長まで勤めた父親の社会的立場の大きさも影響したのかもしれない。いずれにしろ、カーストの伝統と恋愛結婚との一つの妥協点が、この懺悔とカースト復帰の儀式だったわけだ。

The Times of Indiaは、父親の職業に触れて「教育もカーストの慣習の是正には無力だったようだ」と皮肉を込めて報じているが、果たしてどうだろう。OBCに属していても男性の能力を認める企業があり、不本意だろうが伝統社会も妥協点を探ろうとしている。教育は人を一つの大地に引きずりこむ。高位カーストに生まれ育ったというだけで、ふわふわと宙を浮いて下を見下ろしていた人間を引きずり下ろし、地の底でうごめくだけだった不可触民を引っ張り上げる。同じ地平からよーいどんで努力して、自分の能力を高めたものが上に昇っていける。同じ地に立つ者同士が同じ観念を共有し、悩みを分かち合い、感情を共有し、そこに恋愛が生まれるのも自然の流れだ。教育こそがインド社会を少しずつ、確実に変えていくのだ。