2012年

7月

22日

インドの体罰

 

ここのところ日本では、いじめを苦に自殺した中学生とそれに対する学校や教育委員会の対応に関する報道が連日為されている。インドでここ最近相次いでいる報道は、教師による子供への体罰の問題だ。

→教師たちが14歳の児童を袋叩きした上に、自分のおしっこを飲むように強要

タミルナードゥ州の寄宿制の学校で、夜間にトイレに行きたいと申し出た14歳の少年を3人の教師が殴るなど暴行を加えた後に、少年が出したおしっこを飲ませたという。少年は親元に逃げ帰り、傷の治療のために入院したが、学校側は少年の訴えを否定している。

実はこの事件には前兆とも言うべき、別の事件がほんの少し前に起きたばかりだ。

→寄宿舎でおねしょをした女子児童、自分のおしっこを飲まされる

西ベンガル州のシャンティニケタン(ノーベル賞作家タゴールがアシュラムを開いた地)の寄宿制の学校で、10歳程度と見られる女子の寄宿生がおねしょをしてしまい、寄宿舎の女性管理人が激怒。おねしょをした少女のシーツを絞って出たおしっこを少女に飲ませたという。女性の管理人は「おねしょの癖を直すためにやったこと」と開き直った。

極端なケースが相次いで起きたので取り上げてみたが、さらに最近報道されたニュースをいくつかピックアップしてみた。

→教師が宿題をしてこなかった7歳の児童にたばこの火を押し付ける(教師は容疑を否認)


→おしゃべりしていた女子児童の口にばんそうこう


→規則違反のレギンスを履いてきた女子生徒、教室で女教師に脱がされ、そのままの姿で授業、帰宅


→校則違反の髪型の10歳女子児童を叩いて鋏で髪を切った体育教師に懲役1カ月と罰金500Rsの実刑

 

そして給食が最近始まったあるインドの公立学校では、こんな事件も起きている。

 

→給食が少ないと不満の声を上げた児童たちを教師が叩き上げる、親たちは登校ボイコットへ

 

たとえ負傷などの身体的な被害がなくても、一風変わった罰の場合の方がニュースバリューが高く、取り上げられやすい。きっと単純に生徒を叩いたというケースは他にもたくさんあるだろう。教師の方にも言い分や事情があったりして、事件の背景はさまざまだ。しかし行き過ぎて生徒にけがを負わせてしまったり、子どもの人権を踏みにじってショックで学校に行けなくなったり、という経過につながるとやはり批判を浴びやすい。そしてこれらのケースでは生徒の保護者の被害届を受けて警察も動いている。寄宿制の私立学校など、割と裕福な家庭の子供が通う学校でこうしたことが表面化しやすいのは、親の意識が高かったり、社会的に発言力が強いというのもあるのかもしれない。

インドの学校の教師はcane(杖)と呼ばれる、木の棒を持っている人が多い。実際に昨年(2011年)、クシナガラを訪れていろんな小学校を訪れた際にも、それらを持っている教師たちや、教室の前に立て掛けてあるcaneを見掛けた。

このcaneはなんとなく、インドの警察官が持っているlatiと呼ばれる警棒をほうふつとさせる。恐らく他国の英語話者にはピンと来ないかもしれないが、インド英語にはlatichargeという言葉がある。警官が手に持っているlatiで暴徒化する群衆を叩いて追い払ったり、地面を叩いて威嚇したり、そういった行為をlatichargeと呼ぶのだ。


 

教師の持つcaneはそういったある種威嚇の道具であり、子供たちへの示威の象徴でもある。学校現場で実際に何かちょっとした罰として男子生徒の太ももを 順番に叩いて回っている教師を見掛けたことがある。女子生徒は手を出させて、手の平をそのcaneで叩いていた。他校ではもっと派手に子供たちを叩いてい るという話は何度か聞いたことがあるが、自分が見た限りでは、何か教師たちが感情的になって叩きまくっているというシーンはなかった。

→Spin Off 所長さんに何を聞いたか

小学生くらいの子供たちと言えば、どこの国だろうが落ち着きがなく、大人の話をじっと聞いていなくてそわそわしたりするものだが、インドの子供たちは、意 外?と思えるほど学校では大人しい。恐らく子供たちにとっては教師が相当怖い存在で、萎縮しているようにも見えるのだ。

 

インドマイトリの会のインド人ス タッフが一昨年に来日して、日本の小学校の様子を撮影し、現地に帰って地元の教師たちに紹介したときに、皆一様に驚いたことの一つが、教師と児童との関係 だったと言う。休み時間に担任教師の周りに子供たちが集まってきておしゃべりしたり、一緒になってドッジボールをしたりする様子が、彼らには衝撃だったら しい。インドでは教師と子供の間には厳然たる一線があり、日本のようにまるで友達同士のような関係が築かれることはまずないのだそうだ。

 

→可愛い子どもには旅をさせるな!?

また、近年急激に学校が増えているる一方で教師の育成が遅れている現状を考えると、子供へのしつけや理性的な指導というよりも感情的な対応で単なる虐待や 暴行に終始する質の低い教師がいてもおかしくない。日本でもそうだが、体罰のような実力を行使して子供をコントロールすることに社会が厳しい目を向けるよ うになればなるほど、子供とどのように接するか難しい場面も出てくる。インドの教育現場もこれから日本と同じような悩みに直面することになるのではないか。