2012年

8月

31日

生理と女子の教育

 

世界的な広告マーケティング会社のAC・ニールセンと児童支援NGOのPlan Indiaが2010年に行った調査によると、インドの3億5500万人に上ると想定される月経のある女性のうち、生理用ナプキンを使用しているのは12%に過ぎないという。あとの88%は、何かその辺の適当なもので代用しているのだそうだ。

→7割の女性が「生理用ナプキンが買えない」

それはぼろ布だったり、庭先に散らばっている灰、もみ殻、草、落ち葉などだったりするという。インドにはP&Gやユニチャームといった企業が進出しており、生理用品も売られてはいるが、70%の女子は「生理用ナプキンを購入するお金がない」と答えているそうだ。ちなみに日本やシンガポールでの生理用ナプキンの使用率は100%、インドネシアは88%、中国は64%という調査結果が出ている。

女性が生理について人前でおおっぴらに話すことを憚る雰囲気は日本でもあるが、インドでもそれは同様か、もしくはもっと顕著な傾向にあるようだ。そもそも女性の身体の仕組みや月経についての正しい知識が伝えられているかどうか、極めて怪しい。


少し話が飛ぶが、マヌ法典には女子の月経について、こういう記述がある。

『チャンダーラ(不可触賎民)、月経中の女、パティタ(罪人)、産後10日未満の女、死体、これらのものに触れた者、、、以上の者たちと接触したときは、沐浴によって清められる。』

生理の期間は寺院への立ち入りが禁じられていたり、沐浴を控える(ヒンドゥ教では、日々の沐浴は身体を衛生的に保つだけでなく、宗教的な意味での穢れを浄める儀式という意味合いも強い)こともあるという。

つまり、古来より、インド人は女子の月経を宗教的に大変穢れたものと見なしてきた。そしてこの月経があることにより、女子を「穢れを帯びた存在」と見なしてきた節がある。

思春期を迎えても、自らの身体の成長や変化について正しく学ぶ機会のない女子児童たちは、経血に戸惑い、嫌悪し、「神による罰」、「神に呪われている」と思い悩むのだという。

そして一方でこうした女子の生理の処方が正しく行われていないインド社会の現状は、衛生面、健康面において、大変問題があると指摘されている。生理期間こそ陰部を清潔に保つ必要があるにも関わらず、インドではそれがないがしろにされている。清潔な下着すら満足に持ち合わせていない子供もいる。調査に参加した婦人科医によると、生理用ナプキンを使用していない女子は、使用している女子に比べて生殖器官周りの感染症の発症率が70%も高いという。また生理用ナプキンの使用により子宮けいがんのリスクを減らせると指摘する婦人科医も多い。

生理の問題は女子児童の就学にも暗い影を落としている。12歳~18歳の女子児童たちは、生理が原因で月に平均5日間学校を休み、年間では50日に上るという。また初潮を迎え、生理が始まると23%の女の子は学校をドロップアウトするというデータもある。

女子児童の生理に関わる問題は、生理用品だけではない。

地方の学校にはトイレ施設がないところが多い。2011年にクシナガラを訪問した時にも、いくつか小学校を周ったが、小さな私立の学校などはトイレなどないのが普通で、子供たちが校舎の裏や周りの畑で用を足していた。学校には若い女の先生もいたが、一体どうしているのか不思議だった。いずれトイレを建設するとかで校庭の一角に基礎とタンクのための大きな穴だけ空けたまま放置している学校もあった。またせっかくトイレがあっても、掃除ができておらずにひどい有り様で、結局子供たちもあまり使用していないところもあった。インドではトイレ掃除はカーストが絡むナーバスな問題なので、手つかずのまま放置されることもあるのだ。

 

↓ インド/クシナガラで見た小学校のトイレの様子

 

そもそも、→国勢調査に見るインドのトイレ事情 その1 でも指摘したように、インドでは約半数の世帯にトイレというものがない。実際にインドの田舎の村で何度も見かけた光景だが、子供たちは生まれて物心が付いたころから、朝はその辺の目につくところで用を足している。「草陰に隠れて用を足す」なんていう発想はもう少し大きくなってからのようだった。そしてトイレで用を足した経験がないから、いきなりトイレに連れてこられてもできないらしいのだ。クシナガラのある小学校にトイレを新設・寄贈した時に立ち会ったが(→2/17 ●中国寺の学校とインドの学校)、その後何度か訪れると、子供たちにとって待望のトイレだと思っていたのが、それほど使用されていないようだった。先生たちは児童がちゃんとトイレで用を足すように指導するのに苦労しているようだった。

このことは、インドにおいてこうした支援活動のあり方について、とても考えさせられる出来事だった。生理用品の普及、トイレ施設というハード面での充実もさることながら、トイレというものに対する慣れや習慣づけ、生理についての正しい知識と生理用品の使用方法の伝授など、多面的にアプローチしていくことが女子児童の就学の継続と進学には不可欠なのだ。

国(中央政府)もこうした状況を憂慮し、生理用ナプキンの普及に努める取り組みを始めつつあるという。保健省では思春期の女子を対象に、格安で生理用ナプキンを頒布する計画を立てているという。貧困層には6個入り1セットを1Rsで、そのほかの少女たちにも5Rsで提供する予定だが、予算配分が十分でないせいで、初年度は全インドの1/4にあたる地域でのみ実施する予定だそうだ。

 

●2013年夏、バンガロールで女子の初経教育を行うNGO、MITUを訪問しました。訪問記はこちら →2013 バンガロールへの旅

→衛生面での援助が女子の就学向上につながる

→MITU(バンガロールに本拠を置くNGO)では、300Rs(約450円)の寄附で女子児童1人の1年間の生理用ナプキンの費用を賄えると呼びかけている。

 

 

支援活動を行っています。是非ご参加を!
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