2013年

2月

17日

バレンタインデーは反インド的か

 

何度かインドで2/14を迎えたことがあるのだが、インドにバレンタインデーがあるなんて知らなかった。日本人なのでチョコレートの日と思いこんでいたせいかもしれない。意外だが都市のバーやディスコではパーティーが開かれたり、ホテルのレストランではバレンタイン向けのプランが用意されたり、上流の階級では恋人間や夫婦間でプレゼントを贈り合ったりするのが流行りなのだそうだ。今年は特に春の到来を告げる華やかなヒンドゥのお祭り、ヴァサント・パンチャミーが2/15ということもあり、なおさらお祭りムードが盛り上がったのだという。

ちょうどこの時期は結婚式シーズンということもあって、各地の結婚式場も予約がいっぱいなのだそうだ。元来インドの結婚式はとても豪勢で目いっぱいお金を掛けて盛大に催す習わしがあるのだが、装飾用の花飾りの単価が普段の6~8倍にも跳ね上がっているというから景気のいい話だ。そのせいで若い男性が1500Rsで50本のバラの花束を恋人に贈ろうとしたら、20本分しか買えなかったという笑えない話も出ている。

→バレンタインデー、ムンバイだけでも1万組以上が挙式

しかし一方で、インドのバレンタインデーには毎年不穏当な動きもあるらしい。それはいわゆる”サフラン軍団”が起こす騒乱だ。サフラン軍団というのはバラモンのシンボルカラーであるサフラン色のショールなどを纏ったヒンドゥー至上主義を標榜する宗教・政治団体で、VHP(Vishwa Hindu Parishad)、RSS、Shiv Sena、Ram Sena、Bajrang Dal、Hanuman Senaなどインド各地に多数ある。

彼らはバレンタインデーが近づくころになると、モラル・ポリス、いわゆる道徳警察となって私的に町を巡回し、レストランやカフェ、公園などでカップルがいるのを見つけると、攻撃を加える。集団でカップルを取り囲んで説教をするような軽いものから、大声で罵倒する、小突く、パーティーなどでは手当たり次第にその辺にあるものを壊すなど、過激なものに発展する場合もある。そして極め付けなのはデートを楽しんでいるカップルをヒンドゥーの寺院に拉致し、バラモンがヒンドゥー式の結婚式を強引に挙げさせるのだそうだ。

 

彼らはバレンタインデーは欧米の文化であり、それを真似ることはヒンドゥ教の退廃だと主張する。そしてこうした機会を捉えて未婚の男女がデート を楽しんだり、公然と愛を語り合ったりするのは、ヒンドゥの教えに反すると批判する。だから無理矢理に結婚式を挙げさせるのだ。

 

ただデートを楽しんでいた だけのカップルが無理矢理バラモンの前で式を挙げさせられても、そんな結婚は無効だろうと思うのは日本人の感覚だ。宗教婚が主流のインドでは、バ ラモンが作法に則って結婚の儀式を執り行えば、誰もが認めざるを得ない重みを持っている。役所に婚姻届を出すことで結婚が成立する日本とは大きく異なる社 会なのだ。今年はそれを逆手にとって、遠い縁戚関係にある恋人の男女が、親や親せきから結婚に認めてもらえないことから、あえてこうしたサフラン軍団の前 に二人で姿を現し、ヒンドゥの寺院に連れていかれてバラモンに式を挙げさせる「ちゃっかり組」まで現れた。

→恋人達が道徳警察を利用するとき

マ ンガロールでは今年、Bajrang Dalなどいくつかの極右宗教団体が市当局に「バレンタインデーに関わるイベントや催しを認めるな。もし何か騒乱が起きても、我々ではなく市当局の責任だ」と事 前に警告を出した。無用なトラブルを恐れてホテルやレストランなどはバレンタインデーにちなんだ催しものを取りやめるところが相次いだという。もちろんヒ ンドゥ式の結婚式の予約は受け付けるが、バレンタインに関連したパーティーなどは行わないそうだ。「わざわざトラブルを招くようなことはしない。目を付け られたらバレンタインが終わっても商売の妨害をされるから」とはあるホテルマネージャーの弁だ。

警察もバレンタインデーが近づくにつれてパトロールを強化するが、街角で小競り合いなどが起きて止めに入っても、宗教グループの方が警察隊よりも人数が多いことも少なくないので、却って騒乱が大きくなりがちだ。

グ ジャラート州のハイデラバードのある警察署管内では、バレンタインデーを控えて不穏なムードが漂う中、暴動への発展を恐れて当分の間公園を封鎖するよう指 示を出した。

 

カルナータカ州のフブリにあるいくつかの大学当局は、学生たちにバレンタインに関連したパーティーなどを大学構内で開くことを禁じるととも に、外から友人や知人などを大学構内に招き入れないよう呼びかけた。同時に警備員の数も増強したという。これらの大学では2年前に極右活動家らに教室や大学施 設を荒らされた苦い経験があるからだ。

 

→サフラン色のバレンタイン:マンガロール


→ハイデラバード:警察が市内の主要公園に一時閉鎖命令


→フブリの大学はバレンタイン全面禁止


→カップルはモラル・ポリスを避けてショッピングモールへ:カンプール