2012/3/11 ●痩せっぽっちの子供たち


 

今日はインドマイトリの会の事務所にある図書館の週に一度の開館というので行ってみた。朝すでに多くの子供たちが来ていて、静かに本を読んでいる。昨年来た時は多くの子供が小さな声で音読していて、これがインド式?読書法だと思っていたが、今年は多くの子が静かに黙読しているのに驚いた。本を読んだあとに各々のカードにスタンプを押してもらうのだが、並んでいる子供たちを改めてみると皆本当に細い。特に腰回りは驚くほど骨と皮だけの子が多い。

多くのインド人にはコーカソイドの血が流れている。一般的に欧米人の子供は日本人の子供よりも早熟で体格面でも優っている印象があるが、インドの子供の場合は栄養状態のせいか、自分たち日本人の同年代の子供よりも体格的に幼く見えることが多い。

アーユルヴェーダのような、食と身体の関係にいち早く着目し、独特の科学を育ててきた国なのに、インドでの食事を見ていると栄養バランスが取れているのか不思議に思うことが少なくない。栄養学の見地から見たらどうなのだろう?田舎の農村の家庭だと、いくつかの野菜を香辛料で味付けしたサブジーにチャパティという感じだろう。そこで使われる野菜もじゃがいもなどほぼ毎日同じということも少なくないはずだ。空腹を紛らわせればいい、という程度に違いない。牛乳が貴重な動物性たんぱく質だというのに子供はチャイすらあまり飲んでいるのを見ない。

公立学校では給食が出るという。しかしその給食が予算の関係でとても粗末なもので、さすがのインドでももっと改善できないのか?と度々問題になるらしい。どんなものなのか一度見てみたいものだ。私立学校では、学校の前に駄菓子を売る屋台が出て、子供相手に1Rs程度であれこれ細かい駄菓子を売っている。子供たちは休み時間などにそこで買い食いをしてお腹を膨らませているのだ。こういう習慣が常態化しているので、とても栄養に富んだ食生活とは言い難い。しかしたとえ貧しくても、今のところ飢えるようなことはないのだろうか。子供がお腹を空かせていては、とても学校に来て勉強をしたり、図書館にやって来て本を読んだりする気にはならないだろう。

コルカタという都市での話だが、朝、食パンを焼いてマーガリンを塗ってくれるお店で食事していると、登校する子供を連れた父親がそのトーストを買ってランチボックスに詰めてやって子供に渡すのを見掛けたことがある。「えっ?子供のランチがマーガリンを塗ったトーストだけ?」とずいぶん驚いたものだ。

ちょうど1年前、このクシナガラに滞在していた時に偶然目にした新聞記事のことを思い出した。UNICEFによると、インドの青少年の栄養状態はアフリカのサハラ以南の子供たちよりも悪いとしている。特に女の子の栄養状態が問題で、15~19歳の女子の47%が標準体重以下にあるのは世界最悪のレベルであり、56%が貧血なのはマリやセネガル、ガーナなどのアフリカ諸国に次いで6番目としている。

→インドの女子、栄養状態は最悪


→世界の子供は今(The state of the world's children 2011) by UNICEF

家庭で子供の男の子と女の子の扱いに差があるのかどうか分からないが、クシナガラを含むインドの多くの地域では、男性が先に食事をしてから女性が食事をするという習わしがあるようだ。与えられる食事の質や量にも差があるのかどうかは分からない。しかしインドの家族を見ていると、大体どの家庭でも女の子は目いっぱい可愛がられている。もっと言えば目いっぱい甘やかされているような気がするし、決して虐げられているようには見えない。

夕方、ブラジェーシュさんの友人の男性という方が事務所を訪ねてきた。髪が短く、一見男の子かと見間違うような女の子二人を連れている。2人ともジャージ姿だ。今日1日事務所にいて気が付かなかったのだが、タイ寺近くから出走するマラソン大会があったのだと言う。1人は優勝、もう一人は2位だったとかで各々トロフィーを手にしている。男性はこの子たちを指導しているアスリートクラブの主宰者なんだそうだ。賞金も子供に与えるにはちょっと多すぎるのではないかと思えるような金額だった。すごいね、えらいね、と声を掛けると2人とも恥ずかしそうに笑っていた。

 

日本でいえば中学生くらいに見える1人の女の子は成人女子の部で優勝したと言うから驚きだが、こうしたスポーツの習慣自体がこれまであまりなかった国なので、成人女性でマラソンができる人はあまりいなかったのかもしれない。

インドでは今のところ、まだあまり体育教育というのは盛んに行われていないようだが、それでも学校によっては体操のようなものを授業に取り入れたりしているらしい。クシナガラのような田舎でもこうした学校外のスポーツクラブの活動があったり、マラソン大会などが催されていることは、自分にとって意外な発見だった。