1/29 ●グルガオン再び

今日はまたグルガオンに行った。とりあえず先日行ったMGロードでメトロを降りて駅前の3つのショッピングモールをはしごする。さすがにノイダのGreat India Placeを見てしまうと、ここのモールはどれも小さいという印象がぬぐえない。

シティセンターというモールでジレットの男性用替刃剃刀のキャンペーンをやっていた。ブースを設けて7,8人のキャンペーンガールの女の子たちがコスチュームに身を包み、サンプルを配って商品説明をしたり、ひげが伸びている男性を鏡の前に座らせてひげをそってくれる。インドでは極めて珍しい、上半身の体の線がビシッと出ていて、ひざ上のタイトスカートを履いた女の子がひげを剃ってくれるなんて、この国ではちょっとした風俗だなと思っていたら、ニヤニヤ眺めているのは自分くらいのもので、インド人の買い物客は意外とクールだ。特にブースに目を向けるでもなく、ほかのお店のショーウインドウを覗いたりしている。いまいち盛り上がりに欠けるせいなのか、女の子たちがブースを離れて他のお店の前にいる男性客に話しかけ始める。鏡の方を指差しているので、「一度商品を試してみませんか」とでも言っているのだろうが、反応が鈍くて女の子の方が困惑顔だ。ひげを剃ってもらったあとに、その剃ってくれた女の子と並んでうれしそうに写真を撮っている若い男性客もいたが、どちらかというとみんなとてもスマートで、なんというか抑制的だ。

シティセンターを出て駅の反対側のモールへ行こうとすると、駅の階段の降り口に子供の物乞いが数人いた。駅の反対側にある2つのモールの間に大きなスラムがあるのだが、そこの子供たちだろうか。ちょうど社会見学のような、ショッピングモールをぞろぞろと列を作って出てきた小学生くらいの子供たちと、一人の物乞いの少女が遭遇する。綺麗な制服に身を包んだ小学生の子供たちは迎えのスクールバスに乗り込むべく歩道で順番を待っている。一方、生まれてこの方一度も体を洗ったことがないのかと思えるような物乞いの少女は引率らしき女性の前を回ってアルミのランチボックスのような円筒形の容器を盛んに差し出しているが、相手にされない。小学生の子供たちも物乞いの少女に特に目を向けることもなく、おしゃべりしたり、別のほうをぼーっと眺めて立っている。なんともいえない光景だった。

この3つのモールをはしごしている間、またもや停電に遭遇した。しかもこの日は2回。すぐに自主電源が働くようだが、そのたびに警備員がエスカレーターのスイッチを入れ直したり、一部店は半分ほど電燈を落としたまま営業していた。こんな恵まれたところでも電力は日常的に不足しているらしい。やはりインド全体の電力不足がうかがい知れる。MGロードの駅前にはもうひとつ大きなショッピングモールが建設途中で、隣の駅シカンダルプールの前にもいくつか営業中しているほか、建設中のものがある。なんというか猛烈な勢いで開発が進んでいるようだ。人々の消費意欲がものすごい。


夜、パハールガンジ近くのRKアシュラム周辺をうろうろしていたら、物乞いの女性を見かけた。50代くらいだろうか。胡坐をかいたひざの上が盛り上がっているので、見掛けに合わない子供を抱いているのかと思い、少しはなれたところで観察してみる。近くに小さな寺院があり、プジャーに訪れた帰りの女性が葉っぱを型押しした皿に盛ったサブジーを二皿置いていった。すると女性のひざにうつぶせになっていた子供が元気に起き上がって二人でそれを食べ始める。食べ終わるとやかんをもったチャイ売りの少年がやってきてプラスチックのカップにチャイを2杯汲む。これもバクシーシかと思ったら、女性がアルミ皿に入ったコインを何枚か手に取って地面に置く。少年はそれを手に取って去って行った。続いてどこかに観光に行った帰りらしい白人がポケットからお金を出して渡す。インド人の若い男性が袋に入った食べ物?かなにかを手渡すと、女性は中身をチラッと見て服の下に隠した。

3歳くらいの子供は無邪気で、女性に向かってつたない様子で無邪気に何か話している。ぱっと見て男の子か女の子かも分からない。どういう経緯でこの女性と一緒にいるのか分からないが、この子はきっとあと数年しても他の子と同じように学校に通ったりすることもなく、物乞いなどをして生きていく人生を送るのだろうか、と思うとやりきれなくなった。少なくともこの子が選択した道ではない。事情も知らずに批判するのは愚かなことかもしれないが、この子のその後を考えると、感情的なってしまうのを抑えきれない。みんな少しずつ責任がある。お金を上げて支えてあげる人々も、こういう境遇に子供を引きずりこむ大人たちも、通りすがりで何をしていいか分からずに立ち尽くしている自分にも。