2012/2/9 コナーラクの太陽寺院


昨日は何か釈然としない気持ちのまま、Cattuckという町に辿り着いた。この町は地図で見ると大きな河の中洲にあるらしい。来る途中でとても大きな河を越えてきた。川幅はわずかなのだが、それは乾季だからだろうか、砂州はその10倍以上はあった。雨季にはそれだけ川幅が広がるのかもしれない。

今日はコナーラクという町を目指す。太陽寺院で有名な場所だ。昔、実は訪れたことがあるので少し迷ったのだが、ここからプリーへ至る海岸線沿いの道はなんだか良さそうだ。それで急遽コナーラクに向かうことにしたのだ。

朝乗ったバスは客を探すようにあちこちウロウロした挙句、13:30ごろにコナーラクに到着した。寺院近くまで歩いて今夜の泊まり先を探すが、看板はあるもののどこもやっていない様子。食堂だけは客の呼び込みに必死だ。

ようやく一人声をかけてきた男に連れられ、1件のロッジへ。部屋を見せてもらうと、明らかにしばらく誰も泊まったことがないような荒れようだった。しかしもう動き回りたくないので、二つ返事で決定。男は「もう1つ新しいホテルがあるんだ、そこは600Rsだけど。バイクで連れてってあげるよ、フリーだ。」というが、「いいよ、ここで。わざわざバイクで行くなんて」と返す。明らかに汚いが、まあ電気がついてトイレの水が出ればいいか、と自分に言い聞かせる。

後で聞いたところによると、この太陽寺院まわりは土地収用法に基づいて州政府による土地の接収が為されたらしい。現在の太陽寺院の敷地を広げて公園のようにするのか、州政府経営のホテルでも建てるのか分からないが、いずれにしろ再開発される予定で、宿の男も立ち退き金をがっぽりもらって、少し離れた場所に新しいホテルを1軒建てたということだった。「来月にはここも立ち退きになって工事が始まると思う」という話だった。

それからお金を払って部屋のベッドに寝転んで1時間ほど動けなかった。下痢続きでどうも体力がなくなっているらしい。かばんも重く感じていた。

少し休んだら元気になったので、せっかくなので太陽寺院に行ってみる。入り口のところでアイスクリームを売っている男が話しかけてくる。「チケット売り場はあそこだよ」「インド人は10Rs、外国人は250Rsだ」げっ!そんなに違うのかと、むっとする。しかしまあこの入場料がこの世界遺産の修繕や維持に使われるのならいいか、と納得し、ガイドがいるというので、せっかくならガイドに案内してもらいたいなと思っていたら、クルシャンさんという人が声をかけてきた。病気で片目を悪くされているが、とても実直そうな話しぶりで、一目見てすぐにお願いすることにした。

昔ここを訪れたときも、こうしてガイドに案内してもらったなあ、と思い出した。あの時は断ってもしつこく自分を売り込んでくるガイドに根負けし、仕方なく承諾したのだった。

太陽寺院の上部構造の多くは崩落している。自然崩落とムスリムによる破壊と両方が重なったのだという。独自の計算に基づいて建物自体が暦の役割を担うように設計されている。周りに彫られたレリーフはいずれもインドが培ってきた独特の哲学を暗示していて、とくにカーマ・スートラのレリーフの数々は古くからインド人がSEXという行為さえつぶさに観察し、神との合一、精神の高みへの到達に飽くなき追求心を持ち続けてきたことを痛感し、素直にその深遠さ、スケールの大きさに感動した。

残念なのは、自分にこの深遠な哲学をしっかりと受け留めるだけのインド思想についての理解や知識が欠けていることだ。クルシャンさんに素直に感動したことを伝え、昔は渋ったチップを当時の分まで含めてはずんであげた。

ガイドによる案内が終わって一人でまたウロウロする。寺院の周りは芝生が植えられ、木々が植栽されていて公園のようになっている。インドなのにごみ一つ落ちていないのが印象的だ。ここではよほどごみには気を使ってるらしく、寺院の周りの土産物屋や食堂が並ぶ通りも、埃っぽいもののごみはあまり落ちていない。

寺院の周りの木々を眺めていると、白い清楚な花が目に留まった。「定本・インド花綴り」で調べてみると、サンユウカという花らしい。キョウチクトウ科ということで、なるほどニチニチソウの花になんとなく似ているなあと思う。風車が回っているような花の形をしている。インド人には地味で物足りないかもしれないが、日本人好みの可愛らしい花だ。常緑種ということだが、葉も柔らかく、風に花と葉がさらさらと揺れる様子は、見るからに爽やかだ。後で調べると日本でも園芸種として出回っているらしい。恥ずかしながら知らなかった。

寺院の後方に高さ7,8mはあろうかという木が何本かあり、遠めで見ると大きな実でもついているのかと思うほどの真っ赤な花がたくさんついている木があった。芝生の上に落ちている花がらを拾ってみると、真っ赤な百合のような花だった。これはキワタという木らしい。本来は完全に落葉した枝に花だけ咲く姿が一般的だが、ここでは気候の加減なのか葉がついた状態で開花していた。名前の由来は花の後につく実が破裂して綿状のものが見られるからだという。

サンユウカの花
サンユウカの花
葉のついた状態で開花しているキワタ(パンヤともいう)
葉のついた状態で開花しているキワタ(パンヤともいう)