2/8 ●ウッタルカーシーでの過ごし方

ウッタルカーシーでの過ごし方は、毎日とても単調だ。朝起きてスタッフと共用のキッチンで朝食を作り、食事を終えると部屋で音楽を聴いたり、テラスで本を読んだり、ヒンディ語の勉強をしたり、洗濯をして屋上に干しに行く。屋上に上がると日差しが暖かくて気持ちいい。まわりは段々畑に囲まれているが、この時期は麦もまだ背が低い。双眼鏡を持ってきていたのでしばらくあちこち眺める。近くの木によく訪れるキツツキの夫婦がいる。お互い少し離れたところで木をつついている。たまにとてもきれいな羽根をした鳥が飛んでいることがある。まるで小さな孔雀のようだ。まわりの山々や、その山を削って道路工事をしているのを双眼鏡で眺めて過ごす。段々畑の下にガンガーが流れているものの、この時期は水量が少ない。飽きるとまた本を持ってきて寝そべって読むが、気持ち良すぎて30分もしないうちに寝てしまう。

キッチンで昼食を作って済ませると、町に買い物に出かける。歩いて40分ほどの距離だ。田舎の道をぶらぶら歩きながら、木や花の写真を撮ったりしながらなので余計に時間がかかってしまう。標高1300mもあるので朝晩はもちろん、昼まで寒い日が時々あった。それでも日本の早春のような気候で、いろんな花が開き始めていた。日本でいうところの辛夷かモクレンのような花が咲いている。ただし花弁が真っ赤で蝋のように厚く、光沢があるので、可憐というより毒々しい。ブラシの木も自生している。桃のような木もあり、ちょうど花を咲かせていた。そして今の時期でも夜間は10℃以下になるというのに、ゴムの木や柱サボテンが畑のわきに自生している。こんな熱帯の植物が、この日本の昔の田舎を想起させるような風景の中に自生してるのを見ると、とても不思議な感じがする。

自生する柱サボテン
自生する柱サボテン

インドには自分の知らない木や草花がたくさんある。植物についてもっと色々自分に知識があればいいのに、と思う。いつかインドに生えている色々な木や花を見るための旅をしたい。南の海際から、中部のデカン高原、北部のヒマーチャル・プラデーシュの山々、ラダックのように岩しかない乾燥した地にも、何か生えているはずだ。めくるめく旅になるだろう。一生かかるかもしれない。

町に行って特に何をするということもない。一応日課で散歩がてら、賑やかなマーケットを見に来るのだ。新聞を買って、玉子を2つほど買って、たまにパック入りの牛乳を買って、野菜を少し買って、果物を少し買って、パンを買って、落花生をかじりながら町を歩く。山間の町らしく細い路地が多い。ひとしきり歩くとけっこう疲れて足が棒のようになる。チャイ屋でゆっくり休憩し、また40分ほどかけて町外れの宿に戻る。夜まで音楽をかけて本を読んだり、新聞を読んだりして過ごす。時々停電に見舞われるが、それ以前にもともと部屋にある電灯の光量が少ないので、本を読んだり勉強するのは大変だった。